2009-02-17
株式会社バリアフリーカンパニーBy Taro Fujimoto/Japan Today
厚生労働省の調査によれば、1億2千7百万人の日本人口(外国人を含む)のうち、360万人が何らかの身体的障害を持っています。これまで、政府は障害者にとって日常生活がしやすい、いわゆる「バリアフリー社会」の実現のため、各法律を施行してきました。
「障害者団体の多くは、日常生活の不自由さを主張するだけです。彼らの話を聞いていると“だから何が言いたいのか?”と思いました。私は常に、彼らの不満を解決する方法を見つけようとしています」と語るのは、東京・品川区の株式会社バリアフリーカンパニー代表取締役 中澤信氏(48)です。中澤氏は、生まれつきの筋肉疾患により、車椅子で日常生活を送っています。現在では、日本を代表するユニバーサル/バリアフリーデザインの第1人者として活躍されています。
中澤氏は、社会が多様な人々のニーズに今後さらに注目する必要があると言います。「これまでの大量生産社会では、ミスター・アベレージ(平均)と呼ばれる考え方が一般的で、製品やサービスは平均的な健常者に合わせて作られてきました。人々もまた、この商品やサービスに自らを合わせてきました。しかし、状況は変わりつつあり、ビジネスにおいて、消費者に多様な選択肢を提供することが常識となりつつあります。」(中澤氏)
15年間のクボタ社勤務後、中澤氏は、民間企業向けに、商品、職場、建造物のためのバリアフリーに関するコンサルティングを行うため、2001年にバリアフリー社を設立しました。企業の社員向けに障害者や高齢者のための接客に関する研修サポートも行っています。特定非営利法人(NPO)ではなく、バリアフリー社を株式会社として設立した背景には、より多くの人がビジネスとしてバリアフリー問題に関われるようにしたかったことがあるからです。
中澤氏がバリアフリー問題に関心を持ったのは、80年代に初めての海外旅行で訪れたアメリカがきっかけだったといいます。「アメリカに着いた途端、自分が障害者であるということを意識することがなくりました。理由は、誰もが必要な助けはあるかと自然な態度で声を掛けてくれたからです」(中澤氏)。中澤氏によれば、アメリカのADA(Americans with Disability Act)という法律が日本とは違う意識をアメリカ人に与えていると言います。「アメリカでは、“障害”は多様性のひとつだと考えられていると思いました。ADAという法律が人々の障害者とのコミュニケーションを可能にしていると思います。帰国してから、日本でも日常生活のバリアをなくせるのではないかと思うようになりました」(中澤氏)。
日本へ帰国後、中澤氏は日本赤十字でのボランティア活動を始め、『Accessible Tokyo』という都内のホテルや百貨店などのバリアフリー施設に関する英語ガイドブックの更新版の製作を担当しました。日英バイリンガル版製作の責任者となり、中澤氏にとってはバリアフリー関連のコンサルティングの第一歩となりました。
バリアフリー社の設立後、中澤氏の下には多くの企業から商品、サービス、施設のためのユニバーサル/バリアフリーデザインに関するアドバイスを求める声が寄せられたといいます。「多くの企業から、異なる障害者団体が異なる要望をすると相談されました。例えば、路上の点字ブロックは視聴覚障害者には便利かもしれませんが、状況によっては、車椅子の人間には不便な段差となります」(中澤氏)。
中澤氏は、特定の障害者団体の声を代表するのではなく、むしろ、日常生活において、障害者が自由に生活できるように助けることが目指すゴールだと言います。「日本では、障害者は養護学校などに進学することを薦められ、普通の学校に通う機会がありません。しかし、大人になった途端、何の考慮もなく、健常者と共存することを要求されます」(中澤氏)。
中澤氏は、日本の社会では、障害者と健常者とのコミュニケーションが不足していることが問題のひとつだと考えています。「(障害者も健常者も)お互いにお互いのことを知りません。例えば、多くの人がすべての聴覚障害者は手話が理解できると思っています。しかし、実際には、たった15%しか理解できません。また、たった10%の視覚障害者は点字が読めるというのが現状です」(中澤氏)。
2007年、中澤氏は、東京都の品川区とUR都市機構を相手取り、自身が住むマンションのバリアフリーの不備を改善するよう訴訟を起こしました。中澤氏によれば、マンションが最寄り駅とバリアフリーの通路で接続されているとして売り出されたにも関わらず、実際は車椅子では通れない構造になっていたといいます。「区のバリアフリー担当者でさえも、(バリアフリーに関する)知識をほとんど持っていません。区に対して問題の通路を改善するようにアドバイスしてきましたが、無視されました。意味のないバリアフリーは、単なる税金の無駄使いです」(中澤氏)。裁判は現在も係争中です。
「日本人は、まずハコモノを作って、何かをした気分になるところがあると思います。」と語る中澤氏。社会に重要なことは、必ずしもバリアフリー施設などのハードウェアではなく、相手を理解しようとする人々のハート(心)であるといいます。
日本人には、何か行動を起こすためには誰かが後押しをする必要がまだあると中澤氏は考えている。「それが私の役割だと思います」(中澤氏)。そして、自身のバリアフリーコンサルティングは、単なる慈善事業ではなく、持続的なビジネスであると見ています。「私は、障害者だけではなく、高齢者のことも考えています。現在、多くの企業は、高齢社会に向けて、人々の多様なニーズに応えるサービスや商品の重要性を認識し始めています」(中澤氏)。
バリアフリーカンパニー社に関する情報:www.barrier-free-jp.com
(この記事は、英字ニュースサイト「Japan Today」で掲載されたものです。)
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